ワインボトルの底に溜まったカス(澱)の正体
ワインのボトルの底に、何やらモヤモヤしたカスのようなものや、キラキラした結晶のような物体が溜まっているのを見たことがありませんか。
なぜこのような塊が沈んでいるのか、飲んでも大丈夫なのか、正体は何なのか等々、気になりますよね。
これは、ワインの「澱(オリ)」または「酒石」と呼ばれるものです。
澱は、ぶどうの果皮に含まれるポリフェノールの一種で赤紫の色素となるアントシアニンや、渋み成分のタンニンなどが結合したもの。
渋みがまろやかな味へと変化し、ワインが熟成された証でもあります。長期熟成された赤ワインによく見られる現象です。
酒石は、ぶどうに含まれる有機酸の一種が結晶化したもので、酸やミネラルが豊富に含まれた良質な白ワインによく見られる現象です。
長期保管や低温状態で見られることが多く、ヨーロッパでは「ワインのダイヤモンド」と呼ばれます。
ワインの製造工程では「澱引き」という作業が数回行われることが多く、瓶詰する前にも清澄・ろ過が行われ、澱を取り除いて出荷されます。
一方、自然派ワインの場合は、製造工程で清澄・ろ過を行わない生産者も珍しくないので、熟成が進んでいない比較的若いワインにも澱が見られることがあります。
そのため、何年くらい熟成したら澱が発生するといった目安はなく、保存状態によっても異なります。
ワインと澱(オリ)を一緒に飲んでも平気?
ワインのボトルやワイングラスの底に溜まっている澱は、ワインと一緒に飲んでしまっても体に害はありません。
ただ、澱の成分は渋み成分のタンニンや色素成分のアントシアニンなどが結合した塊なので、ものすごく苦くてザラザラとした舌触りです。
良質なワインの証だとはいえ、澱の部分は全然美味しくありません。
せっかくのワインの味わいを台無しにしてしまうので、飲まないことを全力でおすすめします。
勇気あるチャレンジャーの方は試しに舐めてみてもいいですが、あまりの苦みに悶絶するかもです。
通常、ワインボトルは瓶の底にくぼみがありますが、実はあのくぼみの部分はボトルの底に沈んだ澱を舞い上がりにくくするために施された、デザイン的な工夫です。
また、フランスのボルドー型と呼ばれる「いかり肩」の形状をしたボトルは、肩のはりの部分があるため注ぐ時に澱がグラスに入りにくいと言われています。
それでも、無造作に勢いよくワイングラスに注ぐと、澱が入ってしまう可能性があります。
乱暴に扱うとボトルの中で澱が舞ってしまい、ワイングラスに澱が一緒に入ってしまいます。
もし、ワイングラスの底に澱を見つけた時は、澱の部分が口に入らないよう飲まずに残しておきましょう。
ワインの澱(オリ)の取り除き方
熟成したワインのまろやかで繊細な風味を存分に味わうためには、澱をグラスに入れないように注ぐのが重要です。
ワインの澱の取り除き方として、「デキャンタージュ」という方法があります。
デキャンタージュとは、ワインを開栓してからデキャンタと呼ばれるガラス製の容器に移し替えて、あらかじめ澱を取り除く方法です。
デキャンタージュのコツは、デキャンタに移し替える数時間前からワインボトルを立てた状態で置いておき、澱をボトルの底に沈殿させておくこと。
そして、ワインボトルを静かに手に取り、デキャンタにゆっくりと慎重にワインを注ぎます。
ボトルのネックの部分に黒っぽい沈殿物が見えてきたらすぐに注ぐのをやめて、デキャンタに澱が入らないよう細心の注意を払いながら移し替えましょう。